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債務

 債務とは何かと考えたときに、ただ漠然と「何かをする義務」と考えていると他の義務との区別がつかなくなってしまう。思うに、債務とは民法の体系の全体の中で、民法の条文や諸概念との関係の中に位置づけられる機能的概念である。

 とりわけ、債務と債務不履行の関係が大事である。債務とは、それが不履行だったときに、相手方が裁判所に履行の強制を求めたり(414条1項)、相手方が解除したり(541条)、損害賠償を求めたりする(415条)、そういう義務なのである。

 それに対して、たとえば罰金刑に処せられた者は罰金を払う「義務」はあるが、これは債務ではないので、罰金を払わないときに国家が履行遅滞に基づく損害賠償請求を裁判所に申し立てたりすることはないのである。

 債務は単なる「義務」ではなく、民法体系の中に位置づけられた機能的概念なのである。