大学とは何か、という問いに対して、大学の文化史でもって答えを与えようとする本。
本書は、①キリスト教世界と中世都市のネットワーク、それにアリストテレス革命を基盤とした大学の中世的モデルの発展、②印刷革命と宗教改革、領邦国家から国民国家への流れの中での中世的モデルの衰退と国民国家を基盤とした近代的モデルの登場、③近代日本における西洋的学知の移植とそれらを天皇のまなざしのもとに統合する帝国大学モデルの構築、④近代的モデルのヴァリエーションとして発達したアメリカの大学モデルが、敗戦後の日本の帝国大学を軸とした大学のありようを大きく変容させていく中でどのような矛盾が生じてきたか、について論じている。
そのうえで、現代の国民国家の退潮と情報革命に際して、現代の大学の在り方として、国境を超えた都市間のネットワーク、共通言語や学位などの国際的標準化などを提言し、新しい自由の空間の創出に期待している。
昨今の大学改革論議に際して、そもそも大学というものがどういう機能を担っていて、大学の在り方としてどういう選択肢があるか、そういう基本的な問題意識が必要になっている。本書は、大学がどうあるべきかを考えるにあたって必要な材料を、大学の文化史という視点から与えてくれる。刺激的で楽しい読書だった。