社会科学読書ブログ

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 例えば刑法で責任論とか因果関係論とか読んでて思うのだが、刑法学の土俵でいくら論じていても埒が明かない問題というものがあると思う。そういう場合、議論の次元を基礎に引き下げて、哲学的な議論を援用する実益があると思う。だが、注意しなければいけないのは、哲学的な議論は、それが刑法学を益する限度で援用されなければならないということだ。例えば、条件関係は択一的競合などの場合に帰責の基準としてうまく機能しないが、条件関係について哲学的に分析してそれを首尾一貫した形で修正することは、それによって客観的帰属がうまくいくなどの刑法学上の実益がなければならない。法律学の次元において、特定の学説を補強するとか、新たな説得的な学説を生み出すとか、そのような帰結がない限り、いくら哲学的には実のある議論でも、法律学的には無意味である。