トクヴィルは19世紀フランスの思想家で、90日間アメリカに視察旅行に行った際の調査に基づき『アメリカのデモクラシー』を書いた。
内容としては、アメリカは諸条件の平等が極限に達したデモクラシーのもっとも発展した国であり、デモクラシーが共通の未来である以上、アメリカはフランスの未来である、というものだった。
トクヴィルの著作は、アメリカにおいては歓迎され好意的に読まれる一方、いまだ不平等が根強かったフランスでは人気がなくそれほど読まれないまま埋もれてしまった。だが現代になってみると、その平等を基本とするデモクラシーの射程は歴史を予言していたことが分かる。
本書は、トクヴィルの思想について平易に記述した好著である。トクヴィルの原典に当たる前に読んでおくといいだろう。トクヴィルの「民主的人間(ホモ・デモクラティック)」の思想など興味深いし、フランス革命についての考察に関しても触れてある。フランスにおいて彼は時代を先取りしすぎていた存在だった。だがアメリカにとっては自らの原像を映し出す好ましい思想家だった。