社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

現場とは何か

 よく「現場主義」という言葉が使われる。現場の状況を把握しておかなければ重要な意思決定はできないということである。では現場とは何であろうか。それは、物事が実際に起こっていて、その物事の詳細な情報が実感として手に入る場所である。何かサービスを提供している現場であれば、その現場でどのようなニーズがあってどのようなサービスの問題点があるか、それは現場に行かなければわからない。
 現場が特に問題となるのは、人々の大きな関心を引く出来事の現場であろう。例えば広範な人権侵害が行われていたり、重要な法改正が議論されていたりする現場である。行政などはそれらの出来事に対して何らかの対応が迫られる。その対応を決定する際、現場から上がってくる情報が極めて重要となるのだ。現場には具体的で詳細な情報がある。そして問題への対処も最終的には現場で行われる。
 何かが大きく変化するとき、我々はそれに対して何らかの対応に迫られる。我々は社会の変化に対応し適応しながら社会を運営していかなければならない。その際、変化の現場に赴き、変化の詳細で具体的な情報を手に入れる現場主義は欠かすことができない。そうでなければ、その変化が具体的にどのような変化であり、その変化が具体的な我々にどんな対応を要求しているかがわからないからである。
 例えば堤防が決壊したとする。その場合、現場ではどのくらいの規模の決壊が起きていて、どのくらい水があふれ出ているか、その現場の状況こそが上層部の対応を決定する。現場を把握することは意思決定の前提として欠かすことができないのだ。