社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

宇田川元一『他者と働く』(NewsPicks)

  職場で起きる「わかりあえなさ」から生じる業務上の支障などをどう解決するかをナラティブ・アプローチから説いている本。

 仕事をしている人は、それぞれの部署や役職に応じて立場や文脈・ストーリー・価値観(ナラティブ)をそれぞれ持っている。業務上の支障はこのナラティブの溝から生じる。業務を円滑にこなすためには「溝に橋をかける」ことが重要である。そのプロセスは以下の通り。

1.準備「溝に気づく」相手と自分のナラティブに溝があることに気づく

2.観察「溝の向こうを眺める」相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る

3.解釈「溝を渡り橋を設計する」溝を飛び越えて、橋がかけられそうな場所やかけ方を探る

4.介入「溝に橋を架ける」実際に行動することで新しい関係性を築く

 職場で働いている人はみんな他人である。初めから分かり合えるはずなどなく、当然軋轢などが生じ仕事がうまくいかないことがある。もしくは人間関係の悪化に至ることもある。そういうときに、相手のストーリー(ナラティブ)に思いをはせ、橋を架けることで調停していく営みが重要だとする本である。かなり実践的で示唆に富む本だと思う。職場で実践できそうだ。