精神科医の斎藤環と元歴史学者の與那覇潤による対談形式の現代文明批評。我々が生きている現代日本というものがどういう空気に包まれ、どんな価値観に支配され、どんな構造を隠しているかについて、鋭利かつ多角的に論じている。
テーマはそれこそ多岐にわたり、ヤンキー論争や毒親ブーム、SNSや自己啓発本、発達障害バブルやAI、セクハラや働き方、オープンダイアローグやコミュニズムを俎上に挙げ、現代の孕む問題を的確に抉り出していく。しかもそれぞれの論点はお互い通ずるところがあったり、そういうクロスオーバー的な視点も見える。
とにかくこれは「現代日本入門」と言っても過言ではない。今私たちの生きている日本社会とはどういうものか知りたいと思ったら真っ先に手に取るべき本だと思う。もちろんここにそれほど答えは書かれていない。むしろ問題点の提示にとどまる点も多々ある。だが、ここが様々な議論の出発点になると思う。