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小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書)

 

 サラ金が日本において貧者のセーフティネットにまで進化してきた軌跡を追う。現代のサラ金の源流は、個人間金融で金融技術を鍛え上げた素人高利貸である。そこから団地金融業者が発展し、金融技術の大きな革新を推進して情報の非対称性を最小化した。借り手の信用情報を入手するネットワークを築いたりした。団地金融の経験に学んでサラ金創業者たちは銀行からの資金調達を可能にし、女性や貧困層の包摂にも成功する。当初はサラリーマンの遊興的な出費にお金を貸していたサラ金が貧者のセーフティネットと変容していく。

 本書は、「サラ金は悪である」という価値判断をいったん留保したうえで、サラ金が台頭し拡大していった背景にある彼らの技術革新や経営努力に注目している。確かにサラ金はその過酷な取り立てなどが社会的な問題となり、大きなバッシングが起きている。だが、そのような一面的な見方ではサラ金と日本社会の関係性が見えてこない。サラ金の歴史を丁寧に追う本書は、日本のダークサイドを極めて鋭利かつ明快に解明してくれる。