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南相馬で6年働いて感じたこと

 私は福島市で2年間働いたのち南相馬に赴任してそこで6年間業務に従事した。おそらく今回の異動でこの南相馬の地を離れると思うので、こちらの地で感じたことをまとめておく。

 南相馬というと福島第一原発近くの都市であり、相双地方の中心都市であり、東日本大震災および福島原発事故からの復興にいそしんでいる土地である。災害と事故については多くのことが語られていて私がさらに付け足すことなどあまりないと思うが、私がこの地で実際に業務に携わってみて、やはり光と闇の両方が見えてきた。

 闇の部分としてはやはり災害と事故の爪痕である。用地取得などに従事していた時、地権者の家に行ってみると地権者から災害当時のことを延々と聞かされることがよくあった。災害当時の写真を見せていただくこともあった。やはり災害と事故は大きな衝撃であり、被災者は心に傷を抱えており、それについて語りたいし傾聴してもらいたいのである。被災者たちの心のケアは継続的に続けていかなければならないだろう。

 また、課税業務などに従事していた時は、納税者の方からクレームをいただいたことが何度かあった。自分たちは災害と事故で避難を余儀なくされているのに税金を取るのか、軽減措置はないのか、そういう声を聴くことがあった。被災者の方々の被害感情はやはり大きなものがあり、容易に拭い去れるものではないなと思った。故郷を奪われた人たちの無念さにいやおうもなく直面させられた。

 一方で、光の部分もたくさん見てきた。自分が用地取得したところに堤防が完成したりすると感慨極まりないし、法務局で所有権移転登記の状況などを確認すると、こちらの地で経済活動が活発に行われていることが実感された。行政主導のインフラ整備はそれなりに順調に進んでいき、一方で一般の方々の日々の暮らしも絶えることなく活況を呈している。そういう復興への動きを肌で感じるのは何よりの喜びだった。

 南相馬での仕事は現場の仕事で業務量も多く、正直大変ではあったがとてもやりがいがあった。何よりも被災地の人々の日々の暮らしの役に立ち、災害からの復興に微力ながらも貢献できているという喜びがあった。被災者たちの心の傷は決して癒えることはない。それでも被災者たちはそれぞれの生活を精力的に営んでいる。この光と闇の両方を胸に刻み、私は別の土地へと旅立ちたい。