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辻仁成『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』(マガジンハウス)

 

 作家の辻仁成が、思春期の息子と暮らしたパリでの生活をつづったエッセイである。本書のキーワードは「じーん」と「かっちーん」である。息子の成長ぶりや何気ない一言に感動する一方で、息子の態度や遠慮のない発言に気分を害される。

 家族というのは特殊なコミュニティであり、単純に自由を犠牲にして安心を得るという中性的なコミュニティではない。家族というコミュニティにおける成員は限定的であり、かつ関係は感情的で濃密である。通常のコミュニティよりも深い安心感を得ると同時に、通常のコミュニティよりも成員間のぶつかり合いが多い。家族は濃密なコミュニティなのである。

 ましてや辻の家族は父子家庭で二人きりの家族だ。息子との関係は極めて濃密であり、当然感情的なぶつかり合いは多い。だからこその「じーん」と「かっちーん」なのである。私も子育ての途上、これから数限りない「じーん」と「かっちーん」があるのだろうなと予想できる。楽しく子供と成長していきたい。