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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

命題の権力性

 権力性とは何だろうか。権力性が問題となるのは例えば行政処分だ。私人の意思にかかわりなく、一方的にその私人の法的地位を変化させる。そして、その法的地位に従わない場合には物理的な強制がくわえられる。権力性とは、私人に有無を言わせずに一定の法的状態を維持することに他ならない。

 「被告は原告に100万円支払え」という判決が出たとする。この判決は、命題A「原告が被告に対して100万円の売買代金請求権を持っている」を確認しているとする。すると、この給付判決により、命題Aには権力性が付与される。つまり、被告はもはや既判力により、口頭弁論終結時以前の事情によって命題Aを否定することができない。被告に有無を言わせずに、命題Aは真なるものとして通用する。そして、命題Aは上訴や再審などで覆されない限り、その通用力が維持される。また、原告は命題Aに基づいて、被告に対して執行をかけることができるのだ。

 民事訴訟は当事者主義に基づいて処分権主義や弁論主義が妥当するが、要件事実が証明されたかどうかは裁判官が判断し、その要件事実と法を介して裁判官が判決を下す。この判決は必ず権利義務の権力的な確認が含まれていて、そこでは、「権利Xが存在する」などという命題に権力性が付与されるのである。この権力的な命題に基づいて、既判力や執行力や形成力が、敗訴当事者の意思にかかわりなく、一方的に、物理的強制力を背景に、発生する。判決とは権力的な命題を生み出すことに他ならない。

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