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山影進『国際関係論講義』(東京大学出版会)

国際関係論講義

国際関係論講義

 本書は国際関係論の理論的で重厚なテキストである。内容としては国際関係論のたいていの部分を網羅しており、ゲーム理論にまで説明が及んでいる。

 本書の中核的なメッセージとしては、主権国家システムはもはや古いということだろう。現代の国際社会は、政府なき統治(Governance without Government)が行われる場所であり、数々の国際機関や国際規範が主権国家の枠を超えた問題処理を行っている。一方で、これまでは主権国家の内部に閉ざされていた市民や団体が、国境を超えた連帯を作り出し始めている。ウェストファリア体制は、歴史の一時期を画する国際体制でしかなかった。今、国際関係は、主権国家の外部、つまり主権国家を超えた大きな連合、そして主権国家の内部、つまり主権国家内の個人や団体によって担われている。

 本書は緻密な記述が延々と続き、なかなか読んでいて骨が折れたが、その分読んで得られたものも大きかった。理論を説明するのに歴史的事実をうまいこと織り込んでいて、その手腕はさすがだと思った。国際関係を学びたい人にはぜひともお薦めしたい一冊である。