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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

林宜嗣『財政学』(新世社)

基礎コース 財政学 (基礎コース経済学)

基礎コース 財政学 (基礎コース経済学)

 財政とは公共部門の経済活動の事である。市場経済に任せておいたのでは実現できない様々な公益を実現するために、政府が市場に公権的に介入するシステムのことを言う。財政の三大機能として、資源配分機能と所得再分配機能、経済安定化機能がある。市場による価格形成によって適正に配分されない公共財・サービスについては政府が管理しなければならないし、教育のように外部性のあるサービスは市場によっては過少消費となってしまうので政府が配分しなければならない。また、そもそも市場に参入するのに必要な財力がない人や疾病や高齢などで働けない人などに所得を分け与える必要もあるし、地域間格差の是正も必要である。そして、市場経済のインフレ・デフレなどの景気交替を緩和するものとして、税や公共投資による安定化が図られなければならない。

 本書は、財政学のスタンダードなテキストであり、数式による細かい説明はなるべく使用せず、平易で簡潔な文章で本質的な要素を余すことなく網羅しようとしている。また、財政が歴史的に大きく変遷してきたこともよくわかるし、その歴史的変動の先端にある現在の財政的課題としての財政赤字・社会保障については厚く記述している。財政学についてはとりあえずこれ、といった感じだろうか。