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船橋洋一『シンクタンクとは何か』(中公新書)

 

  公共政策を提言する研究機関であるシンクタンクについて概説したもの。

 シンクタンクとは、アカデミックな分野や研究開発部門の研究成果をいかに公共政策の作成に活かし、社会の問題解決に結びつけるかを使命としている。シンクタンクは顧客に応答することよりも自律することを志向し、行動することより考えることを主に志向する。

 アメリカはシンクタンク大国であり、シンクタンクは政府へと人材を供給し、また政府からシンクタンクへとも人材は流れた。だがトランプ大統領の登場以来、シンクタンクのエリートたちはエスタブリッシュメントとして忌避されるようになった。中国やロシアにもそれなりにシンクタンクはあるが、自律性に欠け体制寄りである。日本はシンクタンク小国であり、霞が関が実質シンクタンクのような機能を担っているが、シンクタンクの満たすべき要件をほとんどみなしていない。日本がこれから国際的に発言力を増していくためにシンクタンクは必要である。

 本書はシンクタンクというものがどういうものであるか一通りわかる本である。記述は読みやすく、また読みごたえがある。最近日本がいろんな面で国際的に遅れていることが指摘されているが、シンクタンクについても日本は国際的に遅れを取っている。シンクタンクの特長を理解して日本でもどんどんシンクタンクを設立していくべきであろう。