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合法でも違法でもなく

 事実が法律要件に該当すれば法律効果が発生する。だが、「事実が法律要件に該当する」かどうか不明確な場合もあるはずだ。それは、(1)法律要件の解釈の不明確性、(2)事実を証明する証拠の証拠力の弱さ、に由来するだろう。

(1)例えば、使用窃盗は窃盗にあたらないと言っても、使用窃盗と窃盗の区別はあいまいであり、窃盗の解釈の不明確さにより、例えば自動車を寸借した事実が、違法になるかどうかあいまいなケースが生じる。その場合現行法制では「疑わしきは被告人の利益に」という原則から寸借行為は合法となる。だが、合法・違法とすっぱり分けてしまわないで、その中間である半合法とか半違法という領域を素直に認めたらよいのではないか。

(2)例えば、被告人が被害者を殺したかどうかについて証明が不十分なときがある。このときも、「被告人が被害者を殺した」という事実は認定されず、被告人は無罪となる。だが、この場合も、有罪か無罪かすっぱり分けてしまわないで、その中間である半有罪とか半無罪という領域を素直に認めたらよいのではないか。

 半合法には半合法に応じた法律効果を、半有罪には半有罪に応じた法律効果を規定すればよいのである。例えば半有罪には過料しか科さないとか。だが、この思考の危うさは別のところにある。それは、今度は、有罪と半有罪の間にグレーゾーンが生じ、無罪と半無罪の間にグレーゾーンが生じることだ。結局グレーゾーンというのは常に存在し、それをいちいち拾っていたのでは、機能的に運営されるべき法システムが停滞してしまうのだ。結局、合法・違法、有罪・無罪という二元論は、国家が一定の問題に対して解決を与えるのに必要な最低限の事実分析であり、それ以上精妙に事実を分析していたのでは国家の機能性が害される。結局、法システムは効率的に運営されねばならないという原則から、合法・違法二元論は根強く支持されているのだろう。