最近の若者たちの特徴についてある程度理論化された仮説を提示した書物。
現代の人々は、過去の実績や経験に基づくことなく、他者の能力を低く見積もることに伴って生じる「仮想的有能感」を持ちがちであり、それは時代を反映する若者に特に顕著である。仮想的有能感は中高生が特に多く、また老年世代にも多く、青年世代に少ない。
仮想的有能感と自尊感情の組み合わせで4つのタイプの人格類型を区別できる。
本人の能力不足を他人のせいにする。周りの人の失敗に敏感で簡単に批判する。このタイプが問題である。
本人の実力に裏付けられた優越感を持つ。
他者を尊重し自分も尊重する。望ましいタイプである。
他者に不満はないが、自分にも自信がない。
本書は仮想的有能感という概念を提示し、それに基づき現代社会をバッサリと斬っている本であるが、どうも文章の調子から、「今どきの若者は…」と若者を感情的に軽視している雰囲気が感じられる。著者自体も若者に対して仮想的有能感を抱いているかのような書きぶりなのだ。ある意味、著者自身も仮想的有能感を抱いているからこそ、このような現状分析が可能だったのかもしれない。いずれにせよ、とても面白かった。