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樹村みのり『冬の蕾』(岩波現代文庫)

 

 日本国憲法のもととなったGHQ草案に男女同権の条項を盛り込んだベアテ・シロタの簡単な伝記。子どものころ日本で暮らした時に感じた日本人女性の地位の低さへの違和感が主な原動力になっているような書きぶりであるが、実際はもっと複雑だったのだろう。GHQの民政局でたまたま若い女性ということで男女同権のパートを受け持たされただけかもしれない。様々な外国の憲法などを参考にして、ベアテの草案はもっと内容豊富だったようだが、現在の憲法24条にはそのエッセンスしか残されていない。ベアテの両親とのつながりについてもしっかりと書かれていて興味深かった。

 形式は漫画なので、情報量もそれほど多くはなく簡単に読み流せる感じである。だが、憲法草案で男女同権の条項を作成したベアテの存在というのは割とよく知られているが、彼女がどんな人生を送ったについては知らない人が多いのではないだろうか。そういう盲点のようなところを突いてくるのが素晴らしい。読み終わったあとさわやかな戦慄が走った。