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将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書)

 

 わかりやすいがすごく根本的で重要なことを言っている本。従順であることは一種の美徳のように思われている節があるが、実際は従順であることには様々な問題がある。例えば自分の属する組織が不正に手を染めている時、その組織に従順であることは自らも不正に手を貸していることになる。そして、従順であるということは無責任であるということだ。自らの考えや根拠を持たず、根拠を他人にゆだねてしまうということだ。ホロコーストのようなディザスターは、まさにこの従順さ故に起こった。そうではなく、不正には臆せず意見を申し出ること、自分の考えを持った自立した人間になることが重要である。

 本書はプリマー新書であるから記述は易しいが、政治哲学的な根本問題を扱っている。従順であることの問題点については自分でも自覚しているつもりだったが、このように理論的に言語化されると改めて目が覚めるし感動する。苦境に陥っている人や、違法な組織で働いている人などにぜひとも読んでほしい本である。みんなで声を上げていき、社会を良い方向に変えていこう、そんな気持ちにさせてくれる優れた本である。