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諸富祥彦『「本当の大人」になるための心理学』(集英社新書)

 

 ヴィクトール・フランクルの研究者による人間の成熟論。成熟した人間は単独者として生きている。自立して、他者からの承認を得なくとも自らを自然に肯定できる人間として生きている。そして、成熟した人間は変わることと変わらないことの見極めができて、変わらないことについて諦めることができ、変わることを変えることができる。その他、成熟した人間は現実を受容する、自発性がある、一人の時間を持つ、感性に富んでいる、創造性がある、常識にとらわれないなどの特徴を持つ。

 大人になっても不安や空虚にとらわれている人は多いだろう。そういう人はまだ十分に成熟していないのだという。単独者として自律的・創造的に生き、自己を肯定できること、幼い夢をあきらめそれでも前向きに生きること、現実を直視すること。こういうことが人生の積み重ねの中で習得されていき、人間は成熟するのである。感性の重要性も書かれていてとてもよかった。非常に勉強になった。