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佐藤光『よみがえる田園都市国家』(ちくま新書)

 田園都市国家構想についての概説。岸田現内閣にも継承されている「デジタル田園都市国家構想」において、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」が目指され、DXにより地方を活性化する戦略が示されている。このような田園都市国家構想はかつてもあり、大平正芳は「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」目指した。また、大平の構想の原点にあったのがイギリスのハワードによる田園都市構想であった。ハワードは「都市と田園の結婚」を謳いあげ、田園都市を経済的に分析した。また、柳田国男もまた田園都市構想を持っており、田園社会の社会的ルールや権威の尊重、勤勉性、士気の剛強さが重視された。

 最近、地方に移住する人が増えているという。地方ではそれほどお金は稼げないが、お金とは違った豊かさがある。それは自然とのふれあいとか心のゆとりとか、様々にあるだろう。都会はせせこましくギスギスしている。都市と地方のいいとこどりはなかなか難しいのかもしれないが、私も都会暮らしをしたときはその余裕のなさに辟易した経験がある。現在は田舎に住んでいるが、正直田舎は暮らしやすい。もちろん賃金は高くないのだが、実家に近いこともあり、精神的な豊かさがある。都市と田園をうまい具合に連関させ、暮らしやすさを実現できれば素晴らしい。