とにかく時間がなかった。期限が迫った仕事が大量にあり、定時の勤務では間に合わず、普段から始発で6時には出勤していたが、それでも間に合いそうになかった。私は1歳児を育てているため、夕方定時になったら帰って子守をしなければならない。そうすると、働ける時間は必然的に朝ということになる。朝なら子供が寝ているから妻の負担にはならない。幸い私は朝型の人間なので、朝早い勤務にも対応できる。
それで、繁忙期に3日間ほど朝4時に出勤した。当然バスも電車も走っていないからタクシーで通勤した。早朝のタクシーは配備されているものも少なく、それでも運よく捕まえることができた。家の近くのわかりやすい場所を指定して私がそこへ向かうとタクシーがやってくる。タクシーに乗り込んで行き先を伝える。私は職場に一番近いコンビニを指定した。なぜならそこで朝食を買うからだ。タクシーだと片道1,850円した。それでも仕方がなかった。仕事が押しているのだ。
タクシーから降りたコンビニで朝食を買う。そして、そこから歩いて職場に向かう。守衛室で手続きをして職場に入る。職場はまだ暗い。そこでパソコンを起動して黙々と仕事をする。仕事をし続ける。そして始業時間になるともうお昼みたいな感覚である。私は何事もなかったように仕事を続ける。そして定時まで勤めて家庭という第二の職場へ帰る。
朝4時に出勤した時、私は何も考えていなかった。とにかく仕事を終わらせなければならなかった。時間のかかる仕事だったので仕方なかった。とにかく仕事をするというのが至上命題であり、それ以外のことを何も考えなかった。労働とはそういうものなのかもしれない。