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■因果関係

 因果関係はこの世界に充満している。私がこのようなブログを書いている原因は法律学を勉強したことである。私が法律学を勉強した原因は私の職に就こうという決意である。何も人が殺されたときにだけ因果関係が働いているわけではないのである。

 そのように無数に連なる因果連鎖のうち、刑法学や刑事裁判は特定の因果関係を選択して問題とする。この選択の評価基準は、因果関係の結果が法益侵害であるかどうかである。ある事実が法益侵害と評価されるのは、法制度が出来上がっているからである。つまり、一定の法制度が成立しているからこそ特定の事実が法益侵害と評価され、法益侵害であるからこそ刑法学で問題となるのだ。刑法学による因果関係の選択の前提として法制度の成立がある。

 因果関係は何も実行行為と法益侵害の結果の間にのみ存在するわけではないから、もっと広い視野から因果関係を考える必要がある。実行行為以前の予備行為や共犯者の教唆や幇助も実行行為を結果するものとして当然考えなければならないし、法益侵害以後の証拠発見や逮捕・勾留も、法益侵害を原因とする手続法上の結果として視野に入れなければならない。