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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

加藤朗『現代戦争論』(中公新書)

政治学

現代戦争論―ポストモダンの紛争LIC (中公新書)

現代戦争論―ポストモダンの紛争LIC (中公新書)

 現代の戦争は、主権国家同士の戦争ではなく、低強度紛争(LIC,Low-Intensity Conflict)である。LICとは、亜国家主体対国家主体の紛争である。LICの原因としては、民族共同体の分断、第三世界の従属化による構造的暴力、西欧化によるイスラム主義などとの対立、が挙げられる。LICの手段としては、精神的暴力であるテロ、テロと通常戦争の中間の強度であるゲリラ、が挙げられる。

 冷戦期、米ソの対立が、低開発国におけるLICとして発火することがよくあった。だが、共産主義の敗北(冷戦の終焉)により、冷戦に起因するLICはなくなった。だが、少数派問題・低開発問題・西欧化問題は依然未解決であり、かつ、それらのLICを制御する米ソの後ろ盾がなくなった分、LICは一層激化している。LICへの対策としては、紛争抑止体制の整備、早期の武力鎮圧、回復された平和を維持する体制の整備、相互信頼の醸成、などが効果的である。また、テロ組織への武器、特に核兵器の拡散は最大限防がなければならない。

 本書は、まず、現代において、「戦争」の概念が変わってしまったことを鋭く見抜き、現代の戦争の本質についてしっかり理論づけ、さらにその原因と対策まで丁寧に論述した好著である。論文をベースにしただけあって、本の構成が体系的に整っており、記述も過不足ない。現代世界の悲惨さに短絡的に嘆く前に、ひとまずそのありようを理論的にとらえるには格好の本である。