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ニコラス=シェリル『絶望死』(朝日新聞出版)

 

 現代アメリカの惨状を描く本。「絶望死」とは薬物・アルコール・自殺による死のことである。絶望死の原因としては地位や良い職を失ったり子どもへの希望が失われたりしたことによる失望や挫折がある。現代アメリカの労働者階級にはこの絶望死が蔓延しており、失業、家族の崩壊、麻薬、肥満、早すぎる死という毒に侵されている。だが、麻薬中毒者の更生プログラムも存在し、劣悪な家庭環境に生まれながらも人生で成功する「エスケープ・アーティスト」も存在する。希望がないわけではない。

 アメリカが決して幸福な国ではないことは様々な統計から言われている。小児死亡率、インターネット普及率、清潔な飲料水の普及率、個人の安全、高校の在籍率などにおいて国際的にあまり高くない水準にある。それに加えて労働者階級の没落によるこの絶望死の現象。最近ネットで「日本がヤバい」といった情報に接することが多くなったが、アメリカも相当ヤバい。というかアメリカの方がヤバい。そんな印象を受ける本だった。