社会科学読書ブログ

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カリド・コーザー『移民をどう考えるか』(勁草書房)

 移民についてコンパクトにエッセンスをまとめて論じている本。移民に関する定義と概念を明らかにし、最新のエビデンスに基づき移民に関する諸問題に取り組むべきである。また、グローバルな視点を重視すべきで、南半球から北半球に移動する移民だけでなく南半球の国々を移動する移民もいる。大部分の移民がメディアから無視されており、実際には世界の非常に多くの地域で移民の問題は生じている。移民に関するアプローチはますます二極化しており、移民は概してポジティブだが、ときにネガティブな結果をもたらすこともある。移民の人権を尊重しながら、国際政治の観点から妥当な管理を目指すべきだ。

 日本でも近年移民が増えていて、移民関連の本を何冊か読んできたが、この本はグローバルな観点から書かれた移民問題に対する教科書的な本である。移民に対する問題を網羅しながら、エッセンスについて詳細に論じ、どのような点が課題であるかを抉り出す。きわめてよくできた本であり、移民問題について考えるのならまずこれをお薦めすると思う。