社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

超越の技法

 組織で働いているといろんなことが気になるものだ。基本的に淡々と仕事をこなしていればいいのではあるが、例えば人間関係であったり、人事であったり、組織で働く人ならではの気になることがいろいろある。場合によってはある人に悪口を言われ続けてストレスが溜まっているかもしれない。場合によっては同期よりも昇進が遅くてそれが不満かもしれない。

 もちろん、自分の進退にかかわるような重要なことについては丁寧にコミットして解決しなければならない。例えば深刻ないじめであるとか、罠にはめられて転職を余儀なくされそうになるとか、そうなってくると、自ら戦って問題を解決しなければならない。

 だが、大方はスルーするのが一番であることが多い。ちょっとした悪口とか陰口はスルーする。多少の昇進の遅れもスルーする。それよりも仕事に穏やかな気持ちで取り組むことが一番である。

 まあ、こんなことはどんなビジネス書にでも書いてあるのだが、だが、実際にこのスルーするという「超越」は何によって可能となるのか。自分の世界が組織しかなくて、とにかく社内政治が気になるし出世が気になってしょうがない、そういう人は多いのではないか。そういう人に超越しろと言っても超越の仕方がわからない。

 そこで、私が実践しているのは、組織とは別の領域にも自分の活動する領域を作ることだ。私は読書や創作を趣味としていて、そちらの領域でもそれなりに活躍している。そのように、組織を相対化するような別の領域にも自分の居場所を作るということ。これが超越のための技法である。

 仕事で多少嫌なことがあっても、出世が多少遅れても、自分には別の世界もある。そのような相対化こそが超越の技法であり、魂の健全化である。