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渡辺一史『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書)

 障害者についての認識を改める本。障害者というと、健常者の対義語のように用いられ、哀れで無力な存在のように思われがちである。だが、様々なケアを必要とする意味で、我々健常者であっても十分障害者的側面を持ち、健常者と障害者の間には様々なグラデーションがある。一人では生きられない、他人の支えを必要とするという意味では、我々は皆障害者である。また、障害者は確かに、ある種の崇高さを感じさせ、接するものに畏敬の念や反省の念を抱かせるものであるが、欲望にまみれたごく普通の人間でもある。

 本書は、障害者のケアに携わり、障害者についてのノンフィクションを書いた著者による、障害者についてのガイダンス的な本である。著書『こんな夜更けにバナナかよ』は映画化されてヒットした。我々は皆不完全な存在であるし、人間はそもそも社会的な動物であるが故、社会的な関係をなくしては生きられないのである。障害者の存在は人間のそういう側面を際立った形で示してくれる。面白い本だった。