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姫野桂『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)

 高学歴だけれど仕事ができない人たちのルポルタージュ発達障害を抱えながらも、学業では優秀な成績を修め、良い大学に入るが、いざ就職してみると事務仕事ができない、そういう人たちが多数存在する。上司に言われたことを覚えられない、ミスが多い、空気が読めないなど、職場で不適合を起こし、結局肉体労働に転職する人が多い。だが、そういう発達障害の当事者であっても、証言からわかるのは、大学時代は楽しかったということだ。規律が緩いところでは発達障害の当事者でも十分生きていくことができ、実際昭和の時代では発達障害の当事者でもごく普通に生きていけたのである。

 勉強ができることと仕事ができることはイコールではないことはよく言われることである。特に、勉強ができても発達障害を抱えていると、仕事に必要な記憶力や集中力などに欠け、仕事をすることが困難になってしまう。逆に言うと、現代の事務仕事というものがルールでがんじがらめになっていて、発達障害を許容しないような仕組みになっているということだ。発達障害の当事者でも事務仕事ができるような、そういう事務の仕組みを導入することも考えられる。合理的配慮の観点からは、現代の事務仕事の在り方を見直す必要もあるのではないか。