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源河亨『愛とラブソングの哲学』(光文社新書)

 愛とラブソングについて哲学的な分析を加えていく本。愛は感情の枠に収まるものではなく、対象となる人に関する思考・欲求・行動・感情を生み出す潜在的な基盤である。そして愛は代替不可能である。愛には性欲などの生物学的側面と、結婚制度などの社会的側面がある。音楽の印象はしゃべり方の印象と重なる。愛の優しさを感じさせる曲は優しい愛を語る人のしゃべり方と同じである。ラブソングは愛の概念を広げるとともに聴き手の気持ちを代弁し、聴き手を社会とつなげる。

 愛とラブソングについて、現代の哲学を用いて軽やかに分析している本であり、読んでいてとても面白い。であると同時に、これもまた哲学の学説の一つであることを忘れてはなるまい。愛とラブソングについては別の見方も十分可能であり、そういうものを掘り下げていっても面白いかもしれない。とにかくエキサイティングだった。