社会科学読書ブログ

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メグ・レタ・ジョーンズ『Ctrl+Z 忘れられる権利』(勁草書房)

 EUデータ保護規則にも盛り込まれている「忘れられる権利および消去権」。デジタル贖罪とも呼ばれるこの新しい権利について、各国の学説を踏まえて詳細に論じた本。忘れられる権利とは、自分のものだけにしておくことができなかった情報を、正しい人の手に渡るように、あるいは間違った人の手に渡らないようにするために、救済手段を提供するものである。これは主にデジタル情報について適用され、検索されることで個人の不名誉な情報が暴露されることによる人格的な不利益からの救済を図る権利である。

 ウェブ上に残した記録、あるいは残った記録は、そのままにしておくと、例えば5年後に他人に発掘される恐れすらある。それが個人の好ましい情報であればよいのだが、好ましくない情報であれば、それについて削除を要求することができてしかるべきだ。それは個人の情報ステュワードシップ(情報保護・管理)、プライバシー権を守り、新たな人生を歩んでいる人たちに過去の蒸し返しやほじくり返しを許さない法制度だ。EUではもう制度化されているので、日本でも議論が進んでいくであろう。