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斎藤修『環境の経済史』(岩波現代全書)

 

環境の経済史――森林・市場・国家 (岩波現代全書)

環境の経済史――森林・市場・国家 (岩波現代全書)

  • 作者:斎藤 修
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/06/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  森林などの環境資源を保護するにあたって、市場と国家という二つのアクターが重要な役割を果たす。市場だけに任せて国家が統制しないと、森林の乱伐の危険が高まる一方で、販売用の木材育成による森林保護のモメントもある。国家としては最低限のルール、例えば盗伐を禁止するといった消極的規制にとどまらず、より積極的に土砂崩れなどを防止するため育林を奨励するような政策をとることがある。

 斎藤修『環境の経済史』(岩波現代全書)によると、徳川時代の日本は森林の保全をきちんと行っていた。それは、単に国家が育林のイニシアティブをとるというだけの事情でもなく、かといって市場の機能により自然と育林の機運が高まったというだけの事情でもなく、国家による統制と民衆の働きとがうまくバランスをとるところで成立していた。環境保護に関していえば、国家の働きと市場の働きはともに重要なのである。

 今や環境保護については国際的な関心が非常に高まっている。COPの開催や気候変動枠組条約の締結など、各国はこれからの地球の環境について危機感を抱いている。今や家電や自動車の省エネは技術革新をもたらしているし、二酸化炭素排出量の削減のためにもさまざまなアイディアが出されている。市場からの環境保護の動きが活発化している。一方でCOPの開催など国際的な取り組みや国内法の整備などによる国家による統制もなされている。市場と国家との最適な役割分担が求められている。