社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

法哲学

事実の選別

法律効果の発生の条件として、事実が要件に該当することが要求される。法律や裁判例・学説は、法律効果が発生するために満たすべき「規範」を定立し、法律家はその規範に事実があてはまるかどうかを判断する。法律の答案ではこの「規範とあてはめ」をしっか…

規範と責任

法規範は何らかの利益を実現するために規定されている。だから、法規範に違反するということは、その規範が保護する利益を害するということだ。規範の名宛人は、私人だったり国家だったり裁判所だったり検察官だったり被告人だったりする。 例えば刑法199条…

権利

権利には私権と公権がある。私人との関係における権利と、国家との関係における権利である。 そして、権利には(1)積極的側面と(2)消極的側面がある。権利を行使できるという積極的側面と、権利の侵害を防ぐという消極的側面である。所有権だったら、使…

利益による分類

それぞれの法律には達成すべき目的・利益というものがあると思われる。そもそも立法することに利益がなければ立法はしないはずである。どのような利益を実現すべく作られたのかは、目的規定に明らかにされている場合もあるが、そうでない場合もある。例えば…

法の関知しない領域

ケルゼンによると、法とは違反行為に対して制裁を与えることで一定の効果を生み出す社会的技術であり、このような違法行為には法の規定するこのような強制行為がなされねばならない、といった法命題により記述される。これは何もケルゼンの純粋法学の枠組み…

統計的・確率的思考

法律を制定するとき、統計的・確率的思考も加わっているのかもしれない。 例えば法定相続分は、子と配偶者がいるときは、子が1/2で配偶者が1/2(民法900条1号)、子が複数いればそれをさらに等分する(900条4号)。これはおそらく、遺言を残さ…

執行の内容

法律は暴力を背景に国民に命令する。不作為を命じるのを禁止、作為を命じるのを強制と呼ぶことにする。命令に違反したときに、(1)命令の内容に沿った状態を権力的に実現するか、(2)命令の内容とは無関係の法定された状態を権力的に実現するか、で命令…

法の豊かさと社会の豊かさ

刑法における、客体を物理的に損傷する罪を考える。すると、放火罪(107−110)、殺人罪(199)、傷害罪(204)、文書毀棄罪(258,259)、建造物等損壊罪(260)、器物損壊罪(261)などといった様々な罪が規定されている。 もし、…

法律学の意味論?

刑法典は、ひとつの辞書だと考えてみる。例えば刑法235条は、「窃盗犯」を「他人の財物を窃取した者」と定義しているのである。ある人が「窃盗犯」であるかどうかは、「他人の財物を窃取」したかどうかで決まるのである。 だが、刑法典の規定は抽象的で、…

情報の価値

情報は世の中にいくらでもあるのだが、特別に扱われる情報というものがある。ある情報は頻繁に参照されるかもしれないし(例えば行政規則)、ある情報は熱心に捜し求められるかもしれない(例えば書証)。ある情報は、流通がストップされ、人に知られないよ…

■目的規定 刑事訴訟法1条 この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とする。 法律にはこのような目的規定がおかれることが多いが、…

法律の一部は、方法であり手順でありプロセスである。つまり、合理的な行為連鎖のカタログである。この行為連鎖群は合理的であることが保障されているから、それに従う者は特にその意味を考える必要はない。行為者はただ法律に従って行為すればよいのだから…