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権利濫用

 権利の濫用ですぐ損害賠償が問題になったりするが、そもそも権利の濫用の直接の帰結は権利行使の無効ではないのだろうか。権利というのは形式的・画一的・抽象的に設定されるが、その具体的な行使の現場で、権利の与えられた趣旨に反するような権利行使がなされることがある。これが権利の濫用であり、そもそも権利設定の趣旨を逸脱するのだから、その権利行使は第一次的には無効とすべきである。

 ただし、権利設定の趣旨として、公序良俗に反しないことは当然に含まれ、公序則の一内容として、他人の利益を侵害しないことが含まれる。とすると、権利設定の趣旨に反した権利濫用の現場において他人の利益の侵害が生じることはしばしばありえることであり、その場合、第二次的に初めて損害賠償の問題が生じるのではないだろうか。