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軽く

 それほど親しいわけではない知り合いから、その人が心の病を持っていて、それがそれなりに重いことを告げられた。私はそのことを「重い」と感じてしまった。自分より苦しんでいる人がたくさんいる。だが、その苦しみを目の当たりにしたとき、私は残酷にも、ただ「重さ」を感じてしまった。私は少しストレスを感じたが、これも運命、自分は絶対逃げないぞ、と受け入れた。そうしたら楽になれた。

 同じように、私もそれほど親しくない人には、自分の過去の傷やら悩みやら学問的意欲やら、そういう「重い」ものは表に出さない方がいいのだと思う。それは、人生を楽しんでいる多くの人に「重さ」やストレスを感じさせてしまう。確かに自分のことは理解してもらいたいとは思うが、それは家族や親友など限られた人に対して示せばいいのだ。

 あなたは私のことを何も分からなくていい。あなたは自分の人生を目いっぱい楽しむといい。それを邪魔する権利は私にはない。だから私はあなたとは当たり障りのないことしか話さない。人生の本質にかかわるようなことは話さない。あなたに「重さ」を感じさせ、せっかくの楽しみを台無しにさせたくない。−−多くの人とはそのように距離をとる必要がある。それが優しさなのだと思う。