戦争犯罪に関する国際法の入門書。第一次大戦前の国際社会では国家の行う国際戦争は一般に合法とされ、これを無差別戦争観と呼ぶ。無差別戦争観の下では、戦争犯罪は捕虜の虐待などに限られ、交戦国が戦争中に自国の裁判所で裁いていた。二度の大戦を経て戦争が違法化されると、戦争犯罪は違法な戦争に訴えたことや一般住民に対する侵害行為を含むようになる。国際社会では戦争犯罪を国際犯罪として裁くようになり、国際刑事裁判所の設立が待たれている。
本書は国際刑事裁判所が設立される前に書かれたものであり、その点についていささか古いものではあるが、無差別戦争観から戦争を原則違法とするまでの変遷、また平和に対する罪と人道に対する罪についてなど学ぶ点は多い。ニュルンベルク裁判や東京裁判、旧ユーゴの裁判などにも触れていて、国際裁判の試みの進展が見て取れる。これからの時代は低強度紛争やテロの時代であるから、それに応じた国際法の進展が待たれる。