社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

神里達博『リスクの正体』(岩波新書)

 

  本書は科学史家である著者がリスク社会をめぐって書いた朝日新聞連載をまとめたものであり、一つのテーマについて新書で4ページ分となっている。感染症、自然災害、地球環境、科学技術、ネットワーク社会、市民生活など、テーマは多岐にわたる。それぞれのテーマについて、豊富な学識に裏付けられた鋭い知見が述べられており、断片的な知識やアイディアは手に入る。だがいかんせん新聞のコラムなので、リスクについての体系的で学問的な知識までは手に入らない。

 隙間時間の読書にはちょうどいいタイプの本だが、体系だったきちんとした知識を手に入れるのには向かない本である。だが、様々なアイディアや小ネタに満ちており、読み終えれば話のネタは増えているに違いない。最近のコロナウィルスについても、ウィルスは宿主を殺すようでは共倒れで、宿主と共生するように進化するであろうなどと科学的知見が述べられており、話のネタになる。隙間時間をつぶすのにぴったりな本だ。