ケアの観点から『フランケンシュタイン』や様々なテーマを読みといている本。キャロル・ギリガンが提唱した「ケアの倫理」は、関係性を維持するために互いが相手に対するケア・配慮の責任を担う必要があり、この他者のニーズに応えるべくその声を聴こうとするものである。『フランケンシュタイン』は、ケアを他者に施してばかりでケアを自身に向けることがデキない者、ケアを受け取ることができなかった者たちの声を読者がいかに掬い取るかという物語である。
本書は、戦争や論破、親ガチャなど多様な話題に対して、ケアが働いていずむしろ暴力が支配しているところを問題視して、小さな声を拾い上げることを訴えている。そもそも声をあげられない人たちの声をも拾い上げることを目的として、ケアの精神を生かそうとしている。世界は暴力にあふれ、黙殺された人たちの方が大多数である。声をあげることすらできない弱者と心を通わし、ケアの倫理で結びつくということ。それが大事だということがわかる。