社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

甘え

 友人が、
「何もかも嫌になるときがある」
 というので、私は、
「俺、そういう経験ってないんだよね。っていうか、そう言うのって甘えだと思う。」
 と答えた。友人は少し不機嫌そうになった。だが私は続けた。
「俺はね、甘えちゃいけないっていう気持ちが強いんだ。だからやけになることもないし、相手に感情をぶつけることもない。」
 結局私は、自分に襲いかかってくるものをちゃんと受け止めずにそのまま投げ捨ててしまうことに「甘え」を感じているのだ。ちゃんと受け止めないということは、自分の責任を果たさないということだ。それは甘えているということである。私はさらに続けた。
「サムライ精神みたいなものかな。でも、もっと甘えていいんじゃないかな。そうだよ、もっと甘えてもいいんだよ。なんかね、俺は何でも自分一人でやろうとするんだ。他人の手を借りてはいけないみたいな考えが強い。だから、T君にこういう風に送り迎えしてもらうことにも初め抵抗があったんだ。」
「そうなの?」
「うん。なんていうかな、だれにも頼りたくない、そもそも俺に触るな、みたいな。」
「それ単なる人間不信じゃない?」
「うーん、そうでもなくてね、人に迷惑をかけたくないんだ。自分の領域に他人を巻き込むことに罪悪感を感じるんだ。これは子供の頃からそうなんだけど。」
「ふーん。」
 だがしかし、これまで私の生活で他人の助力によってなしえてきたことは計り知れなく多い。仮に人に甘えないとしても、実際に他人の力を借りてきたことに対するリスペクトは忘れてはいけないだろう。それに、もっと甘えてもいいのかもしれない。もっと、人間同士が助け合っているという現実を受け止めて、それを受け入れるべきなんじゃないか。甘えることはなくても、少なくとも自分が独りで生きているというわけではないという現実を直視し、他人の協力へのリスペクトを忘れないことは大事だ。