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塩沢・島田『ひとり暮しの戦後史』(岩波新書)

 

  第二次世界大戦は多くの男性を戦地に送り出した。そのことによって、いいなずけや恋人を失ったり、夫を失ったり、また結婚する可能性が奪われたりした婦人が相当数いた。そういった婦人たちは独身を余儀なくされ、厳しい生活条件のもと生きていかなければならなかった。本書が書かれた1975年当時、企業に雇用される女子の待遇は賃金面でも昇進面でも恵まれていず、早期退職制度もあった。そのため、婦人たちは働きながらも低賃金で、しかも就業年数が短いため、充実した年金をもらうこともできず、老後の不安も抱えている。

 さて、この戦争時に婚期を逃した婦人たちの話は、現代のシングルマザーの問題に近いように思える。女子たちは正社員になってもそれほど高賃金が望めず、パートや非正規に甘んじることも多い。女性の社会進出が進んだといっても女性が一人で生きていくにはまだまだ厳しい社会情勢だと言わざるを得ない。本書で紹介されている具体的な人たちが組合運動に力を注いだのもうなずける。女性の地位向上はまだ道半ばである。