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北村匡平『遊びと利他』(集英社新書)

 公園の遊具における子どもの遊びを理論的に考察した本。遊具の利他性とは、遊び手と遊具、遊具を媒介とする遊び手たちが、相互にポテンシャルを引き出し合う関係を築けることだと著者は考えている。利他的な遊具は、媒介性、偶然性、転覆性、物語性、全身性を備えたプロセス志向の遊びを生み出し、管理や目的志向から抜け出している。近年の遊具は安全志向の高まりから利他性が奪われつつあり、そのことを著者は危惧している。

 私も幼い子供がいるので、公園の遊具で遊ばせることは多い。それをこのように理論的に解析されるととても痛快である。理論建てとしてはそんなに難しいものではないが、それを遊具に適用するところが斬新である。遊具についてこんなふうに分析して考えたことがなかったので、本書の分析はとても面白かった。こういう、普通の人が着眼しないところに着眼する当たり、著者の慧眼がうかがわれる。