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丹野さきら『〈種〉の超克』(講談社選書メチエ)

 本書は、生まれることをすぐさま種の繁殖に結び付ける社会通念を批判している。人間は生まれたとき、家族の一員でも社会の構成員でもない、ただの「哺乳類の幼虫」にすぎず、父を持たない。人間はそのような種のドグマから解き放たれたところで、唯一性、差異性を持った個体として存在する。種や類が存在するのではなく、個体が存在するだけなのである。

 本書は、最近の少子化問題などを受けて種の繁殖が喧伝されている現状への理論的な反論であり、様々な哲学者の言説をもとに生まれることと種の繁殖は別個のものだということを繰り返し主張している。久しぶりに重厚な哲学書を読んだ気がしてとても読みごたえがあった。縦横無尽に展開される議論は上記のように簡単に要約されるものではないが、ひとまずはこれを契機に私もこの問題について考えてみたい。