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短答式試験の存在意義

 未成年者の婚姻には父母の同意が必要だが、同意なくして届け出が受理されると、その婚姻は取り消せない。この知識を問う肢があった。これでは同意を要求した趣旨が貫徹されないのではないか。それで基本書を読むと、やはり立法の不備であると書かれてあった。そのような首尾一貫しないようないわば欠陥のある制度を、正しいものとして受験生に記憶させるのはまずいのではないか。そう思って友人にそんなことをメールした。

 ところが、友人曰く、択一というものは、すべての出発点であり、一応妥当するものとして中立なものだから、まずはそれを覚えるのが第一段階である。むしろ、いくら筋が通っていても条文とは異なる学者の説を出題することの方がよっぽどまずい。それでは思想統制になってしまう。学者が立法論を展開するにあたっても、ひとまずは現行法をきっちり理解しておかないと適切な批判はできない。

 さすが、この業界に長くいるだけあって、私なんかよりも試験についての洞察が深い。結局、学問するためにも択一はその前提となるわけだ。法制度を正確に理解しておかなければ、それに対して建設的な議論をすることは不可能なわけだから。学問の前提としての択一試験、そう思ったらとたんにやる気が出てきた。頑張ろうと思う。