社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2020-01-01から1年間の記事一覧

私はなぜ残業をしないか

私は基本的に毎日定時で帰ることにしている。夜の残業は休日の前か金曜日以外しないことにしている。理由は簡単である。効率の悪い労働は悪だと思っているからだ。ちなみに私は夜の残業をしないだけであって朝は毎日1時間の残業をしている。月20時間、残業…

本田由紀『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)

教育は何を評価してきたのか (岩波新書) 作者:由紀, 本田 発売日: 2020/03/21 メディア: 新書 日本の教育がいかに序列化と画一化を生み出したかを検証している本である。日本では人間の望ましさを「能力」「態度」「資質」という言葉で評価してきた。能力に…

植村和秀『ナショナリズム入門』(講談社現代新書)

ナショナリズム入門 (講談社現代新書) 作者:植村 和秀 発売日: 2014/05/16 メディア: 新書 本書はナショナリズムを定義づけたうえで、そのダイナミズムを世界各国の具体例を通して説明している。ナショナリズムとは、まとまった土地を確保しそこに歴史を積み…

佐々木毅『アメリカの保守とリベラル』(講談社学術文庫)

アメリカの保守とリベラル (講談社学術文庫) 作者:佐々木 毅 メディア: 文庫 本書はアメリカの保守とリベラルの対立、またその対立の乗り越えについて論じた基本的文献である。小さな政府を志向し、カトリック道徳に忠実な保守と、大きな政府を志向し、弱者…

パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』(早川書房)

コロナの時代の僕ら 作者:パオロ ジョルダーノ 発売日: 2020/04/24 メディア: Kindle版 本書の著者はイタリアの作家であり素粒子物理学者でもある。それゆえ、このエッセイには多分に科学者としての知見が盛り込まれており、作家のエッセイというよりは科学…

谷口・宍戸『デジタル・デモクラシーがやってくる!』(中央公論新社)

デジタル・デモクラシーがやってくる! -AIが私たちの社会を変えるんだったら、政治もそのままってわけにはいかないんじゃない? (単行本) 作者:谷口 将紀,宍戸 常寿 発売日: 2020/03/06 メディア: 単行本 本書は、情報技術が政治にどのような影響を与えるかに…

上村忠男『アガンベン《ホモ・サケル》の思想』(講談社選書メチエ)

アガンベン 《ホモ・サケル》の思想 (講談社選書メチエ) 作者:上村忠男 発売日: 2020/03/11 メディア: Kindle版 本書は、イタリアの哲学者であるアガンベンの思想を紹介している。フーコーの「生政治」の思想を継承したうえで、それを「ホモ・サケル」という…

兼本浩祐『発達障害の内側から見た世界』(講談社選書メチエ)

発達障害の内側から見た世界 名指すことと分かること (講談社選書メチエ) 作者:兼本 浩祐 発売日: 2020/01/14 メディア: 単行本(ソフトカバー) 精神医学の現場で起こる「診断」することについての哲学的考察である。本書では「分かる」ことを説明と了解に…

大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに』(星海社新書)

生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 (星海社新書) 作者:大谷 崇 発売日: 2019/12/27 メディア: 新書 ルーマニアのペシミストであるシオランを紹介した本である。シオランは怠惰を奨励した。なぜなら怠惰であれば行為も存在…

ジュリエット・B.ショア『浪費するアメリカ人』(岩波現代文庫)

浪費するアメリカ人――なぜ要らないものまで欲しがるか (岩波現代文庫) 作者:ジュリエット・B.ショア 発売日: 2011/03/17 メディア: 文庫 所得の高い仕事に就くとたいてい激務であり、私生活の余裕があまりとれない。だが、私生活の余裕を取ろうとすると所…

宇野重規『未来をはじめる』(東京大学出版会)

未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学 作者:宇野 重規 発売日: 2018/09/27 メディア: 単行本 本書は中高生を相手になされた政治学の講義の記録である。「異なる者同士が共にいること」を政治の出発点として、共にいることの諸態様、友人関係であ…

柴田久『地方都市を公共空間から再生する』(学芸出版社)

地方都市を公共空間から再生する: 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント 作者:柴田 久 発売日: 2017/11/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) 公共工事はバラマキであるとか不平等であるとか箱モノを作るだけとか批判されてきたが、それは公共工事に…

千葉雅也『勉強の哲学』(文春文庫)

勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫) 作者:雅也, 千葉 発売日: 2020/03/10 メディア: 文庫 学校を出て仕事に就いてからも、いろいろと見識を深めたいと思う人は多いだろう。だが、いざ勉強をするとなると、どこから手をつけていいか分から…

木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義』(星海社新書)

ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想 (星海社新書) 作者:木澤 佐登志 発売日: 2019/05/26 メディア: 新書 人間たちは、互いに共存共栄し合い、人間という種族の繁栄を期するために日々生活し様々な政治活動を行う。たぶんこれは多く…

森岡孝二『雇用身分社会』(岩波新書)

雇用身分社会 (岩波新書) 作者:森岡 孝二 発売日: 2015/10/21 メディア: 新書 非正規雇用によるワーキングプアの問題はつとに指摘されてきた。『蟹工船』がベストセラーになったりする背景には、労働者の人権が十分保障されていない現代への不満がある。だが…

中原淳他『残業学』(光文社新書)

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書) 作者:中原淳,パーソル総合研究所 発売日: 2018/12/12 メディア: 新書 働き方は人それぞれ、残業についての考え方も人それぞれである。だが、残業というものをデータとエビデンスと論理に基づ…

森岡孝二『過労死は何を告発しているか』(岩波現代文庫)

過労死は何を告発しているか――現代日本の企業と労働 (岩波現代文庫) 作者:森岡 孝二 発売日: 2013/08/21 メディア: 文庫 雇用とは原理的に契約であり、定められた職務の提供に対して定められた報酬を支払うという以上の何物でもない。契約である以上、原理的…

川島武宜『結婚』(岩波新書)

結婚 (1954年) (岩波新書) 作者:川島 武宜 メディア: 新書 結婚して幸せになる。現代の我々は普通にそんなことを考える。だが、結婚が幸福に直結することは戦前の日本では必ずしも自明ではなかった。川島武宜『結婚』(岩波新書)によると、戦前においては両…

内田健三『戦後日本の保守政治』(岩波新書)

戦後日本の保守政治―政治記者の証言 (1969年) (岩波新書) 作者:内田 健三 発売日: 1969/12/20 メディア: 新書 政治記者が書いた本書は、学者が書いたと思うほど整然として無駄がなく情報量が多い。戦後日本の首相の系列を中心に据えて、彼らの足跡を追ってい…

原田曜平『さとり世代』(角川oneテーマ21)

さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち (角川oneテーマ21) 作者:原田 曜平 発売日: 2013/10/10 メディア: 新書 最近の若者には覇気が感じられない、スマホばかりいじってきちんとコミュニケーションをとろうとしない、などと、おじさん世代からする…

小室淑恵『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)

プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術 作者:小室 淑恵 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2018/09/06 メディア: 単行本(ソフトカバー) 日本人は久しく働き過ぎだった。そこでは個人の健康や労働者の権利よりも企業の論理が優先される企業中心…

福井康貴『歴史のなかの大卒労働市場』(勁草書房)

歴史のなかの大卒労働市場: 就職・採用の経済社会学 作者:福井 康貴 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2016/03/18 メディア: 単行本 皆が皆リクルートスーツに身を包み、個性を出さない身だしなみをして、ひたすら自己分析を繰り返し、採用面接で希望先企…

望月優大『ふたつの日本』(講談社現代新書)

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書) 作者:望月 優大 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/03/13 メディア: 新書 最近コンビニや飲み屋などで外国人労働者をよく見かけるようになった。日本への移民は確実に増えており、それは我々の…

斎藤修『環境の経済史』(岩波現代全書)

環境の経済史――森林・市場・国家 (岩波現代全書) 作者:斎藤 修 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/06/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) 森林などの環境資源を保護するにあたって、市場と国家という二つのアクターが重要な役割を果たす。市場だけに…

中野雅至『「天下り」とは何か』(講談社現代新書)

「天下り」とは何か (講談社現代新書) 作者:中野雅至 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/12/17 メディア: Kindle版 公務員というのは叩かれやすい。それは、彼らが我々の税金で生計を立てており、その割にはそれなりの収入を得られる良い職業であり、身…

竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)

日本を救う未来の農業 (ちくま新書) 作者:竹下 正哲 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/09/06 メディア: 新書 国民の幸福を実現するためにはその国が繁栄しなければならない。人々が活発にアイディアを出し合い、技術革新を行い、社会問題を解決し、よ…

カフェインについて

仕事や勉強をするときにカフェインを摂取する人は多いのではないだろうか。その形態はコーヒーかもしれないしエナジードリンクかもしれない。まず朝起きたときにコーヒーを一杯。次に始業時にコーヒーを一杯。さらに昼休みにコーヒーを一杯。運転するときに…

軽部謙介『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)

官僚たちのアベノミクス――異形の経済政策はいかに作られたか (岩波新書) 作者:軽部 謙介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/02/21 メディア: 新書 政府が何らかの政策を打ち出すと、新聞で結果だけを読んでいる我々としては、あたかも総理大臣が単独で…

渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)

置かれた場所で咲きなさい 作者:渡辺 和子 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2012/04/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 渡世というものはまことに難しい。世の中の人間関係は複雑だし、その複雑な人間関係にどう対処するかについて明確な答えがない。時…

税務職員を一年間やって気づいたこと

1 目標は財源確保 税務職員は政府が事業を展開するにあたって必要となる財源を確保するために課税及び徴収する任務を担っている。だが、租税法律主義のもと賦課徴収は行われるため、法律に基づいた分しか税金は徴収できない。だから、頑張ればたくさん課税…